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Germanistik, Philosophie(Aufklärung, Phänomenologie, Logik), Biologie, Musik und Kunst

国会図書館のサービス

国立国会図書館で絶版となって入手が難しくなった資料およそ153万点をオンラインで閲覧できるようになったというニュース。

www.huffingtonpost.jp

利用には個人向けデジタル化資料送信サービスへの登録者(つまり国立国会図書館の「本登録者」)であることが必要となる。詳しくは↓

www.ndl.go.jp

以前から騒がれていて、私も調べ物を多くする身分なので大変ありがたくは感じる。そうでなくとも小説や詩歌の類、その他割と一般向けに思えるもの、また漫画なんかもあるようなので、教育や娯楽・趣味を目的としても利用可能だろう。今では存在しない半ば同人的な出版社から出版された「稀覯書」にあたる書籍の数々も多くが閲覧できる。

例えば鮎川信夫が肝入りとなって立ち上げられた荒地出版社は、数多くの優れた文学作品の作品集などを出版していたが、21世紀に入ってしばらくして吸収合併で消滅。その出版物の多くも、もはや手に入れるのがなかなかできない。というわけで検索してみると、例えば藤森安和『15才の異常者』などがある。この本は通販サイト「日本の古本屋」で検索しても在庫が確認されない。

15才の異常者 : 藤森安和詩集 - 国立国会図書館デジタルコレクション

他方Cinii Booksで検索すると天理大学日本大学の二つの大学にしか収蔵されていないこともわかる。

CiNii 図書 - 15才の異常者 : 藤森安和詩集

三ヶ月以内に入手することが困難という基準の具体的な内容は調べていないのでよくわからないのだが、大学図書館にすら所蔵されていることが稀ならば、まずもって入手困難と言えるだろう。

こうした資料を見ることができるようになるというのは、以前から戦後の日本で出版された書籍が少なからずアクセス困難になっているという(特に人文社会学系の)研究者たちが漠然と感じてきた不便さを解消してくれるように思う。

ただなんでもあるわけではない。専門書や翻訳はどうなのか。他の図書館でも容易にアクセスできると判断されればこのサービスには乗ってこない。例えば文化人類学者のマーシャル・サーリンズの古典的研究『人類学と文化記号論』には法政大学出版局から翻訳が出ていたものの、とうに絶版となっている。ただし国会図書館の今回のサービスでは提供されていない。「日本の古本屋」で検索しても一冊しかヒットしないとはいえ、である。となれば図書館だろう。

こうした線引きについては仕方ないことが多くあるだろうから、近辺の図書館に赴く必要はどうしても出てくるだろう。またあるカント学者も言っていたが、古書市場がどうなるかも注目すべきかもしれない。