vergiss meiner nicht
この分野の先駆けとなった研究者Isaac Elishakoffは、その共著書 "Optimization and Anti-optimization of Structure under Uncertainity" (2010)で、次のような示唆に富む引用をした。
As Wentzel (1980) stresses, probabilistic methods arefrequently regarded as a kind of magic wand which produces information out of a void. This is a fallacy; the theory of probability only enables information to be transformed, and conclusions on inaccessible phenomena to be drawn from data on observable ones.
不確定性を考慮に入れる時、私たちは常に確率論を用いたいと考えるわけだが、しかしそれだけが有効な手立てだと思うならば、それは「謬見」であるという。つまり、私たちは観察可能なデータを手にした時、そこから何らかの予測を立てるにもかかわらず、結局その先のアクセス不可能な現象については何ら決定的なことをいうことはできないままである、という現実を認めなければならない。*3
もし認めなければ破綻が訪れるのみである。
さらに続く箇所で二人の著者は次のように述べている。
Probabilistic methods must yield a central quantity-reliability of the structure, namely, the probability that the structure will perform its mission satisfactorily. Modern society rightfully expects extremely high reliabilities and, consequently, extremely small probabilities of failure.The deterministic mechanical theories represent a cornerstone of probabilistic mehanics. First, the phenomenon schould be understood qualitatively; next, it scould be understood sufficiently well quantitatively. Then the output quantities in thier intricate dependence on their input counterparts are developed as a set of equations, algebraic expressions, or numerical codes of varying complexity.
結局のところ、確率論は対象を、諸相に分類した後に計量される量的データに基づいて、それぞれの視点・アプローチから記述する。ある性質に注目したところ頑健な構造を成すとしても、共におのずから備わっている様々な傾向からみて、別の性質が不都合を生じさせる場合もある。質的な理解は、従って、等価的で対称的なデータセットを発見し、かつそれらをコーディングできる代数式を構成しながら記述されていかなければならない。*4
その様にして初めて複雑なものがどのような過程で、ある構造体を安定的になすことができるのかを理解することができるだろう。
このブログはそれでも、このような個体化の向こう側で私たちを見つめるものについて記録を取り続ける。
ここに書かれるべき事柄は、
日々聴いた音楽について
日々読み進めた本について
すこしばかりの話、見解
なにがしかの喚起されたイメージ
研究のための抜き書き
それ以外の抜き書き
全ての忘れるべきでないもの
*1:だから彼のinformation概念を踏まえればなお、ここでのformが形相として訳されるほど、物質的なあり様に限定されるべきかは実に疑わしい。また、これらの用語の説明としては次の文献が簡潔である。Jean-Hugues Belthélémy (2015) Fifty key terms in the works of Gilbert Simondon, translated by Arne De Boever. Gilbert Simondon: Being and Thechnology. Edinburgh University Press.
*2:私見では、O'Connerらが取り組む通時的創発主義は、このような情報がもつ種々のスケールが、互いに交差する過程を考慮している限りで有効であり、存在論的にみて新たな次元が生じていると考えるのは正しい。
*3:Elishakoff and Ohsaki (2010) Optimization and Anti-optimization of Structure under Uncertainity. https://doi.org/10.1142/p678
*4:同上