みずうみ
連なる、薄墨の山襞を、繋げられてある、珠の光が流れていく、
熱に包まれ葉は影に染まり、小波をうけた貝のように唸りをあげる風を抱きこむ、
小さき、卑しめられた木々はより集まり、絶えることなく、吹き返す、
人々の住う野が延びてゆく彼方へ炬火は消えてゆく、嘲笑うかのように、
霞む空を燕が翔る、木々はうちしずむ農夫の首のように傾げている。
その瞬間、環状線の陸橋に人殺しが身を潜め、聞くに耐えない声が、
響く、響く、耳を殴り、硝子を震わせ、夜の帳は引き裂かれる、
そうして紫丹の絹の漂う宙空に、ゆったり二つの大きな眼が開く、
それは恐ろしく残忍な眼差しを、なお騒がしい墓標へ向け、
萎れていく、一日の時間に、途方もない一滴の涙を落とす。
ここ、彼ら、移住者たちの立つ場所に、無数の靴が埋葬されている、無数の
虫螻が吹き返している、聖なる腐敗はいち早く天へ昇り、輝きはじめ、
星々は道化て、耳を掠める蜂のように、脅す、突き刺し、かき乱す。
惑乱された水面、蜘蛛の巣のように艶やかで、私はゆったり小舟を進める、
やがて光は一つ残らず煙となって、私の額を覆う、冷たく、獣の爪のように。