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Germanistik, Philosophie(Aufklärung, Phänomenologie, Logik), Biologie, Musik und Kunst

Cuticle of the Pear II

エメラルドが嵌め込まれた扉が一つあった。そこから少し離れた木陰で私はずいぶん長いこと待っていた。いくつもの昼と夜が過ぎていったのに雨は一向に止むことがなく、太陽は徐々に衰え、私は凍えていた。手足は感覚を失い、いよいよ私は木の根に座り込んで項垂れいた。その扉はその間一度も開かれることがなかったし、帰りを待ち望む人も音沙汰ないままだった。いつかは必ず帰ってくるはずだ、と私は信じているけれど、それがいつになるのか私にはわからなかった。ある年老いた男は、私が木陰で待っているうちに来るだろうかと尋ねたところ、そのような無謀な真似はやめておきなさい、彼が帰ってくることはない。現実を見なさい。少なくともお前が生きているうちに帰ってくることはないのだ、と告げた。私はそれを信じる気にはなれなかった。だが、どうやらその老爺の言葉が正しかったのかもしれない。全身が痩せ細り、皮膚は不潔のあまり酷い湿疹を引き起こしていたために、いよいよ私も諦めかけていた。私は醜く、生きたまま腐敗し始めているように思えた。ここに鏡がなくて幸せだった。だって、私は彼が帰ってくると思って、化粧を施し、一番のお気に入りの衣装に身を包んできていたのだから。化粧はとっくに落ちて、ドレスはボロ切れになって悪臭を放っていたし、一部は皮膚に癒着していた。私の肉体はもはやこのボロ切れの一部になり、このボロ切れは腐りかけの肉片の一部になっていた。

 

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魂を吹き込むように彼は鞴を重く踏み込み、馬の糞を混ぜた麦や薪にともされていた熾はそれに応じて赤々と輝く。彼は銀を精錬していた。彼が工房に篭って何をしていたのか、私は尋ねることをしなかったが、扉の隙間から時に覗き込んでいると、窯の前で背中を丸くしている彼の黒い影が浮かび上がっていた。鋳型に流し込まれた銀は、裸眼で見つめることが許されない程輝き、少しずつ冷え固まる間に形が与えられ、一挙に冷やされる。彼はやがて、銀でできた鋭い五寸ほどのナイフを持って出てきた。既に六度昼と夜が過ぎていた。私はその間鶏や山羊に飼料をやったり、星々を眺めたり、子供たちに絵本を読み聞かせたりしていた。

ある晩、私は目を閉じ横になっていた。そして遠くで犬が激しく吠えたてているから眠れないでいた。そしてそのうち、それが犬の吠え声ではないことに気づいた。慌てて目を開くと、彼の工房の扉は開かれていて、私は胸騒ぎがした。家の中を見渡すまでもなく、私は森に向かった。そして水車小屋の手前に設えられていた〈安らいの家〉に私は到着した。扉を激しく叩いた。私は待っていた。だけれども、私は考えないでいたのだ。そして涙を流して私が横たわっていると、彼が後ろから手を回して、私を抱え起こした。その手はあまりに冷たくなっていて、爪の間に血糊がこびりついたままだった。

彼は言った「現実をありのままに見るのだ」。私はその時が来たのを覚悟した。

 

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目を覚ますと骸を燃やす匂いがした。私は烏達に突かれていた。痛みはもはやしなかった。肉もろくにないので、すぐに烏達は離れていった。そばで誰かが燃やされていた。森の開けた場所だった。私は意識を失って、扉の前からここまで運ばれたのだろう。誰かが私を死んでいると思ったのだ。そして火葬しようとしていた。だがなぜそんなことをするのだろう。私が穢れているというのだろうか。ひきづられてきたのか蕾ような形の傷口がいくつも開いていた。私は全身を冒されていたのだろうか。煙の向こうに篝があって、鉈を持った老爺がこちらに近づいてきた。「なるほど、まだ生きようというのか」「おじいさん、私はまだ生きています」「だがお前はあまりに無理をした。私の忠告に従うこともなく、森の端で瘴気を吸い過ぎて、病に冒されしまったのだよ。もう長くない。それどころか、危険なのだよ」「どんな病気だというのでしょうか」そう尋ねた時、右脇腹がうずき、そこに開いていた傷口から、眼のような白く丸い塊が吐き出された。私が痛みに顔をしかめると、老爺は鉈をその白い塊に突き刺し、火にくべようとした。「おじいさん、それは何?」「卵だよ。私はもう三つも処分した。どうせこういう役回りは年寄りと決まっているんだよ」

そう言っているうちに鉈の先から白い塊が垂れ落ち、地面の上にゆったりと広がった。まるで粥の塊のようなそれは、刃の入った箇所から赤い液体を吐き出し、やがて金の鱗に包まれた塊を吐き出した。その光景はあまりに神々しく、私は言葉を失っていた。そして私の背中は再び卵を吐き出していた。老爺は舌打ちをして、焼きを入れようと熱した鉈を突き立てた。するとやはり赤い液体が噴き出てた。

 

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「私はお前を待っていた。だが帰ってくることはなかった。二度とないのかもしれない。お前がどこかで悪徳に耽っているのかと思うと私は耐え難く思う。お前はまるで悪の巣そのものなのだ。お前はいつまでも彼を待っていたが、決して帰ってくることはない」

「私の方こそあなたを待っていたのです。そんなはずはありません」

「いや、お前は夫の顔を間違えるような狂った女だっただろうか。そのような行いは許されるものではない。私は裁きが降ることを願っている。法を犯したお前はもう救われることはない。」

「そんなことはあってはならないことです。私は信じません」

 

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やがて〈安らいの家〉の扉が開かれた。その時あたりには誰もいなかった。そこにはいくつもの骨が転がっていた。風が黴に冒された空気を僅かにさらっていった。父は狩猟を終え帰ってきた。その右手には銀のナイフが握られていた。そして左手では縄に括られた鹿を一体引きずっていた。そこに一人の痩せこけた女がやってきた。全身を瘴気に冒されていた。彼は悟った。そして家に招き入れた。中にはイコンが掲げられた祭壇があった。そして女はそこに寝かされた。天井にはもう一つ扉があった。金の枠にはめ込まれ、エメラルドの嵌め込まれ、荘厳な彫り物がなされているのを蝋燭の明かりが浮かび上がらせていた。その扉は何の力も感じさせず、ゆっくり、ゆっくりと開かれた。そして輝きが差し込んできて、女は瞼を失い、瞳は悲鳴を上げるように細く絞られた。彼は銀のナイフを女の腹にゆっくりと差し入れ、そのまま開いた。血は僅かにしか出なかった。女はもう声を上げることもなかった。彼は腹を開いた。そして根を生やしていた一塊の茨を巻き取り、血を流しながらその奥に眠った心臓ほどの大きさの鉱石を取り出した。それは金剛石だった。それを彼は祭壇に据え、ナイフを手にしたまま、香を炊いて立ち去った。やがて扉は閉ざされた。女の息はとうになかった。

 

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父は沈黙し、清流にナイフを浸していた。血は漱がれた。
それから雪が降り始めた森の中に姿を消した。寒さが谷間の底を衝いていた。