Moderat, Modeselektor, Apparat
モデラート（Moderat）は2002年から活動を始め、2009年にセルフタイトルのアルバムModeratでデビューした。およそ7年もかかってようやく完成したこのアルバムはもちろん高く評価されることになるのだが、その頃のインタビューで以下のように語っているのが印象的だ。
完全に即興ライブでとてもいい感じだったんだけど、EPに関してはなかなかうまく行かなかったし、時間がかかり過ぎたね。あーだこーだと右往左往して、よく話あったりもしたけど、他のアーティストとスタジオで一緒に作業するのはそんなに簡単じゃないのがよくわかったね。結局10回ぐらいやり直したり、マスタリングにもえらい力を入れたんだけど結局はみんな疲れちゃって、決して満足とはいえなかったな。
始まりはModeselektorとアパラート（Apparat）ことザシャ・リン（Sascha Ring）の共演から始まった。ApparatがEllen Allienの目に止まり、彼女が自分のreベールとの契約を持ちかけたことから、Modeselektor、Apparat、Ellen Allienの間でコラボレーションが始まった。その中でModeratも生まれたのである。このインタビュー記事でModeselektorの側でもApparatとは基本的な性格の違いや作業過程に関する諸々に相違があると述べているが、Sascha Ring自身も2枚目のアルバムModerat IIを制作した後のインタビューで、その点についていささか皮肉な面持ちで語っている。
半ば公式のインタビュー（Monkeytown制作）でも同じように苦労が語られている。
もっとも、最初に提示したKEXPのライブは3枚目のアルバムModerat IIIの後のものだが、そのアルバムについては全員揃ってのおふざけインタビュー映像が公開されている。
いずれにせよ1stアルバムを契約し、その後も彼らの音源を出しているレーベルは当時すでに確固とした地位を築いていたベルリンを拠点とするDJエレン・エイリアン（Ellen Allien）が創設したBPitch Controlであり、彼女が意図した通り新たなテクノ音楽が出発するためのプラットフォームとして、またも機能したというわけである。彼女なしにModeratは実現しなかったかもしれない。
Ellen Allien
そもそもBPitch Controlは公式webサイトで自ら称しているように「言葉に極めて忠実な意味でのレーベル、つまり品質の保証印（a label in the truest sense of the word: a seal of quality）」である。確かにこれは事実だろう。これまで1999年に設立されてからパオル・カルクブレンナー（Paul Kalkbrenner, 1977-）、ザシャ・フンケ（Sascha Funke, 1977-）やModeselektor、Kikiとして活動を続けるヨアキム・ヴィリヒ（Joakim Willich）など重要なライブアクトやプロデューサーたちの音源、それからディロン（Dillon）のような比較的若い才能の音源を出版し続けている。
Ellen Allienは70年生まれのようで、親世代はクラブカルチャーに親しむことはなかったが、どうやらクラブに毎晩のように通っていた姉が彼女をその文化に引き入れたようだ。80年代に青春を経験した彼女はまさにクラブミュージックが大規模な産業へ発展していく過程を身をもって経験していた。1991年12月14日にはファビアン・レンツ（Fabian Lenz, ）やその賛同者たちによって第一回のMaydayがベルリンで開催され、現在に至るまで定期的に都市を移りながら開催されているが、その規模や商業的成功はクラブミュージックがヨーロッパで確立した地位を、そしてベルリンがその最も重要な拠点都市の一つであることを明瞭にした。Ellen Allien自身も2001年に初めて出演している。
